はじめに
今日は栄養や犬のケアではなく、
歴史学的な感じで書いていこうと思います。
今回触れていくのは”犬種”について。
チワワとグレート・デーン。
同じ「犬」なのに、ここまで見た目が違う動物は珍しいですよね。
なぜ犬にはこれほど多くの犬種が存在し、それぞれ異なる姿になったのでしょうか。
たくさんの犬種が一同に集うイベントなどにいくと、いつも不思議に思うのです。
改めてその理由を知ると、犬との暮らしが、そして犬という生き物が愛しく面白く感じるのではないでしょうか。
目次
・はじめに
・目次
・犬の祖先はみんな同じ
・家畜化の歴史
・なぜこんなに見た目が違うのか
・体の特徴には意味がある
・実は性格にも影響している
・見た目が違ってもみんな犬
・犬は人が生み出した最も多様な動物
・まとめ
犬の祖先はみんな同じ

そもそも犬は学術的にはオオカミの亜種のひとつ、”イエイヌ”とも言います。
オオカミは学名Canis lupus、犬は学名Canis lupus familiarisと言います。
学名はラテン語でcanisは犬、lupusはオオカミ、familiarisは家族のを意味します。
つまり犬はオオカミの親戚、のような位置付けになっているのがわかります。
それもそのはず、これは多くの人が知っていますが犬はオオカミから派生した生き物だからです。
これは遺伝子学的にも犬と現代でいうタイリクオオカミと同じ祖先を持つことが判明しています。
そして面白いのがボルゾイもダルメシアンもプードルもチワワもシェパードも、犬の祖先は全てオオカミにつながっており、
見た目も特徴も違う全ての犬種は同じ種なのです。
家畜化の歴史

オオカミが家畜化されイヌになったことは有名ですが、実は今となっては世界中にいるイヌたちがどこで家畜化されはじめたのかは判明していません。
少なくとも東アジア説、中東説、ヨーロッパ説、東ユーラシア説があり、
現在では東ユーラシア説が有力視されています。
東ユーラシアはシベリアや中国南部、東南アジアのあたりを指します。
東ユーラシアで狩猟採集をして過ごしていた人々とオオカミが絆を育み、ここで家畜化がはじまります。
その後、人類が移動するのとともに西の中東やヨーロッパに家畜化されたオオカミたちも分布していったと考えられています。
そして東ユーラシアからやってきた家畜化されたオオカミたちはヨーロッパやアジア、アフリカに到達した後、現地にいたオオカミたちとさらに交配を重ねたことが分かっています。
イヌが誕生した具体的な年は分かってはいないものの、少なくともスイス(ヨーロッパ)で1万4200年前のオオカミとは確実に異なる犬の化石が見つかっています。
愛しい毛玉たちは少なくとも1万4200年前から我々人間と関わり合っていたのです!
人間が狩猟採集をして生きていた時代に家畜化され世界中に分布して行ったイヌですが、
人間が農耕を始める前にすでに“人間と暮らすDNAを持つイヌ“がヨーロッパから西アジアにかけて広く分布していたことが化石の発掘で分かりました。
これにより広い範囲でイヌがオオカミではなく人間と暮らす動物として定着していっていたことが分かります。
なぜこんなに見た目が違うのか

犬はシェイプシフターと言われ、形態的多様性の生き物とされています。
シェイプシフター、形態的多様性とは環境や状況によって劇的に見た目や性能を変化させる生き物のことを指します。
犬がまさにそうなのです。
学術的には哺乳類でここまでサイズや形が異なる生き物は犬しかいないとまで言われています。
犬がシェイプシフター、形態的多様性であることの理由は大きく分けて2つ。
ひとつ目は犬自身が持つ柔軟的なDNAによるもの。
犬の遺伝子情報(ゲノム)はタンデム反復配列と言われる同じ配列が繰り返される部分が他の動物より多く存在します。
このタンデム反復配列は繰り返される回数が変動しやすいという特徴を持っており、
これによりDNAのわずかな配列の違いで大きな違いのあるイヌが数世代という短期間で発生します。
近年の研究ではイヌのサイズや見た目は遺伝子情報のうち、ごくわずかな部分の違いで生み出されていることがわかりました。
例えばチワワもグレートデーンも基本の遺伝子情報は同じでIGF1という遺伝子ひとつの違いで体の大きさがあんなに異なるのです。
ここまで遺伝子情報の配列を柔軟にできたからこそ、人間の家畜化にもはやく順応したのかもしれません。
ふたつ目は人為的な交配によるもの。
家畜化されたオオカミであるイヌたちは最初期は狩猟採集をして暮らしていた人間とお互いwin-winの生活をしていました。
人間と狩りを協力することで獲物を得る確率をあげていました。
この時点でイヌと人間はほぼ対等でしたが、より家畜化が進むと人間たちとの関係も密接になります。
人間は目的に応じてイヌをより効率的にしようとしました。
これがイヌの品種改良です。
例えばダックスフンドは穴に潜り、穴の中にいるウサギやアナグマを狩るために胴が流く、足が短くなりました。
ちなみに最初に品種改良されて生まれた犬種は特定されていませんが、現存している犬種で最初期に品種改良されたのは”サルーキ”と言われています。
サルーキは紀元前7000-6000年前のメソポタミア文明の遺跡から現代のサルーキと変わらない犬の彫刻やミイラが出土しています。
このようにその目的に特化したイヌになるように品種改良が重ねられ、狩猟犬、牧羊犬、番犬、愛玩犬、そり犬などになるにつれて
イヌたちは姿や形が大きく異なってきました。
体の特徴には意味がある
鼻がぺちゃんこなパグやブルドッグなどがいる一方で、鼻筋がスッと通ったマズルがしっかりのサイトハウンドもいたり、イヌの身体的特徴は様々です。
その違いはかわいいというよりも、歴史を辿るとしっかり意味があってそのような姿、形になっていることがほとんどです。
例えばブルドッグはもともとブルペインティング(牛いじめ)に用いることを目的に交配された犬種です。
牛にけしかけるための犬としてがっしりと筋肉質な体躯、強い顎、低い重心の身体、怖がりではない性質を残しながらブリーディングされた結果が今のブルドッグの姿、形になっています。
ブルドッグの特徴的な短いマズル、鼻は牛に噛みついても鼻が塞がらずに長時間噛み付いていられるよう、あのような短いマズルになりました。
鼻の長さ、耳の形、足の長さ、体格、被毛、尾の形を見るとその犬種がどのような目的を期待され交配され生まれてきたのかが分かるでしょう。
実は性格にも影響している
最初に言っておきたいのは同じ犬種、同じ親、同じ育て方をしても犬は同じ性格にはなりません。
犬種と性格の関係は悪魔で傾向に過ぎません。
ただ犬種によって性格に出やすい傾向があるのも事実です。
例えば牧羊犬としての目的で交配され生まれたボーダーコリーは生まれながらにして人と何か共同作業をすることに喜びや生を感じる個体が多いと言われており、
この”生を感じる”、”欲求が満たされる”というのはその犬によって異なり、各犬種においてはその犬が交配され生まれた目的によって満たされることが多いのです。
そのため、ボーダーコリーの点で言えば指示(コマンド)をくれるご主人への忠誠心とコマンドを実行、完遂しようという頭の回転の速さや運動能力が高い犬が多い傾向にあります。
(ただこれも各個体によって、その犬種ならではの性質が色濃く出ている犬もいれば、まったくその犬種の性質が出てない犬もいるので本当に個体差によります。
あくまで傾向です。)
見た目が違ってもみんな犬

前項で犬種の特徴が交配の歴史に基づいていることに触れてきましたが、
どんなに見た目が違っても犬は犬なのです。
犬の定義は”オオカミから家畜化された動物”。
もっと詳しく、犬を犬たらしめるものとして挙げるなら大きく3つ。
1つ目は遺伝子。
犬の遺伝子はどんな犬種でも99.9%は共通しています。
大きな体重差もわずかな遺伝子配列の違いによって生み出されています。
2つ目は繁殖能力。
ライオンとトラが繁殖能力があるように、
現実的ではないですがチワワとグレートデーン間でも繁殖能力があり、子孫を残せます。
現実的ではないにしろ、科学的には可能であり、これは同じ種であることを定義付ける重要な証拠になります。
3つ目は共通した行動や生態。
犬は社会性が高い動物であり、
匂いやボディランゲージ、鳴き声などでお互いにコミニュケーションをとることができます。
唸る、吠える、目線の動きや尻尾の動きは犬の中での共通言語なのです。
一部の犬種では耳やしっぽ、顔の形の違いから誤解が生じることもありますが、
多少の違いがあっても犬同士のコミニュケーションはどんな姿形をしていても犬ならお互いにできることなのです。
犬は人が生み出した最も多様な動物
世界最大の犬種登録組織、国際畜犬連盟(FCI)では現在約350種類の犬が登録されています。
犬種公認団体によって、その犬をとある犬種として認めるかは方針が異なり、
FCI:国際畜犬連盟では350種、
AKC:アメリカンケンネルクラブでは200種、
TKC:ザ・ケンネルクラブでは220種が登録されています。
少なくとも200種以上の犬種がいることになり、ここまで多様性に富んだ哺乳類は犬が随一とも言えるでしょう。
また、これほど姿形が異なりながらも同種の哺乳類も他に類を見ません。
姿形も体重は1キロから70キロ超えまで、顔もマズルの長さや皺の有無、垂れ耳なのか、たち耳なのか、短毛種なのか長毛種なのか、手足の長さ、口の大きさ、、
今簡単に述べてみただけでも本当に多様性に満ち溢れています!
(犬って本当最高に魅力的!)
まとめ
犬種ごとの違いは、「かわいい個性」だけではありません。
何百年、何千年もの間、人と暮らし、それぞれの役割を担ってきた歴史そのものです。
見た目の違いに目を向けるだけでなく、その背景を知ることで、犬という動物をより深く理解できるでしょう。
ただ少し忘れてはいけないのは犬種改良によって生まれた魅力や新たな人間と犬の共同作業や仕事ができた一方で、
極端な体型や顔立ち、血縁の近すぎる交配などが原因の遺伝的な健康問題もあります。
だからこそ、見た目にとらわれず犬1匹1匹の幸せを願わずにはいられません。
人間が生み出した犬たちが多いからこそ幸せに生きてほしい、その責任が我々にはあると思います。
今日も世界中の毛玉たちの
幸せを祈って!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
⭐︎参考にした文献
・”犬の科学”
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・AKC (American Kennel Club)
・TKC(The Kennel Club)
https://www.royalkennelclub.com
・The Domestic Dog: Its Evolution, Behavior and Interactions with People

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