はじめ
最近はただ食事やおやつを犬に与えるのではなく、知育玩具や早食い防止皿など工夫をして食を行わせることも珍しく無くなってきました。
知育玩具や早食い防止皿でよく使用される言葉があります。
それは”エンリッチメント”です。
今回はこの言葉の意味や、犬にとってのエンリッチメントについて解説していきます。
目次
エンリッチメントの意味
エンリッチメント(enrichment)の単語の意味は”より豊かで有意義で報いのあるものにする行為”
実はエンリッチメントは造語で環境(environmental)と充実(enrich)がかけ合わさってできた言葉。
そして、エンリッチメントは主に飼育動物に対して使われることの多い言葉です。
例えば環境エンリッチメント(environmental enrichment)は
人工的な環境に暮らす飼育動物の野生として正常な、野生において自然な行動を引き出し、飼育環境下での異常行動を防ぎ飼育動物の心身の健康を改善するために、飼育環境に行う工夫を指す。
要は飼育環境下で暮らす動物の生態に基づき、よりストレスの少ない野生に近い環境に近づけるために工夫してあげることを意味します。
もっと簡単に言ってしまえば、飼育動物のQOL(クオリティーオブライフ:生活の質)向上と言えるかもしれません。
環境エンリッチメントとは飼育動物の心身の健康にもつながることから動物福祉の点からも評価されています。
環境エンリッチメントの例として、
動物園に飼育されているシロクマの居住スペースに
魚やフルーツを入れた氷をプールに入れてあげたり、タイヤや”浮き”をおもちゃとして入れてあげたり、ロープや木など触覚が刺激されるものを置いたり、、、
その飼育動物の生態や個性に合わせて、彼らを熟知している飼育員さんが工夫して実践しています。
飼育動物にエンリッチメントを実践することで異常行動の予防、減少、ストレスの減少、常同行動(同じ場所を何度もウロウロ、ぐるぐる回る等)の減少、自傷行為の現象、活動量の増加などが期待できる。
環境エンリッチメントのほか、
・空間エンリッチメント
飼育動物の生態に合わせてプールや水場、氷を設置したり、床材を藁や砂利にしたり、暗い場所や高所などを設置したりする工夫。
半永久的な施設を設置する場合には構造エンリッチメントと言われることもある。
・感覚エンリッチメント
触覚エンリッチメントとも。草食動物の匂いのついた麻袋を肉食動物に渡したり、熱帯雨林の鳥や雨の音を流したりする工夫。
・社会的エンリッチメント
飼育動物と他の動物との関わりに着目したエンリッチメント。集団で生活する動物には単独で飼育するのは避けたり、ペアで飼育したりする。社会的エンリッチメントでは人間と飼育動物との関係も含まれ、その関係は複雑と言われるがガラスや檻越しでも心理的な関係は構築できるとされている。
・認知エンリッチメント
動物の知性を刺激するための工夫。
食べにくい皿や高い場所に吊るされている草、道具を使わなければ撮ることのできないおやつなどが例に挙げられます。
犬にとってのエンリッチメント
長く人間と共にいき、人間の社会に参加し暮らしを支えてきた犬にとってのエンリッチメントとはどのようなものが挙げられるか。
・犬にとっての環境エンリッチメント
犬は夜間や暗所でも目が利きます。また元来、洞穴や洞窟で寝ていたと言われています。
狭くて暗い場所が犬とって落ち着く場所だということです。
犬のパーソナルスペースとして、体のサイズに合ったクレートや屋根付きのベッドなどを用意してあげたり、
犬自身が見つけ気に入った場所(ベッドやソファの下、棚の1番下の段となど)を犬に提供してあげるのも良いでしょう。
また、犬は元来室内で生活している動物ではありませんでした。しばしば外へ連れ出し、外の空気や草木の匂い、温度などを感じ、体を動かせる環境も重要です。
・犬にとっての感覚エンリッチメント
散歩の際に草木や木の幹の匂いを十分に嗅がせてあげたり、アスファルトの地面だけではなく、砂場や泥道、砂利道などを歩くことも感覚エンリッチメントにあげられる工夫でしょう。
他の犬の匂いや他の人間の匂いも犬にとっては大事な情報源になります。
・犬にとっての社会的エンリッチメント
犬は群れで生活していた動物です。
群れはパックと呼ばれ、リーダーが存在していました。家庭内で犬のリーダーを明確にさせることも犬にとっての社会的エンリッチメントになります。
また、犬はコミュニケーション能力が高く、社会的な動物です。他の犬とのコミュニケーションや遊び、そしてリーダーと認めた人間や家族以外の人間とのコミュニケーションも犬にとって大事な社会的エンリッチメントになります。
犬の個性によってはその交流自体がストレスになり、苦手な犬もいるので無理のない範囲で、
ドッグランや公園での他の犬との交流、トリマーさんや獣医師さん、飼い主の友人などとの交流も実践していくと良いでしょう。
・犬にとっての認知エンリッチメント
犬は狩りを通して獲物を見つけ腹を満たしていました。獲物を口にするまでに匂いや音から獲物を見つけ、仲間と追い詰め、息の根を止め、、頭と体をフル活用して狩りを行っていました。
人間に飼育されるようになった今、狩りをしなくとも、頭と体を使わずとも食事は出てきます。
そこで工夫をして脳を刺激して食事を与えることで満たされにくい犬の本能を満たすことができます。
市販の知育玩具を使用したり、躾やトレーニングのご褒美でおやつを与えたり、方法は多岐にわたります。
犬にとってのエンリッチメントの実践
①飼育環境の見直し
犬のパーソナルスペース、安心できる場所はあるか、
ずっと家の中で暮らしていないか、散歩や外出はしているか、
②視覚、嗅覚、触覚は満たせているか
鮮やかなおもちゃや、いろいろな音が鳴るおもちゃ、
草木の香りや他の犬のマーキングの匂い、
野生の鳥や他の人間の匂い、
チクチクする刈ったばかりの芝生やドロドロの水たまりの触感など
様々な良い刺激を受けているか。
食事やおやつはただ与えられるだけではなく、体と頭も使って得ているか。
③社会に参加できているか。
他の犬や他の人間とのコミュニケーションに触れる機会があるか、
犬同士で遊んだり挨拶したりする機会があるか。
犬にとってのエンリッチメントの具体的な実践法
ここまで長々とエンリッチメントについて書いてきましたが、では愛犬に実践する場合にどうしたらいいのさ、と思われたと思います。
私が実践する犬にとってのエンリッチメントを紹介したいと思います。
・他の犬や飼い主さんとの交流(社会的エンリッチメント)

これ実は社会的な犬には難易度の低いことなんですが、我が家の子のように極度の怖がりやトラウマ、反応的な犬(reactive dog)の場合、なかなかハードルの高いもので、
ドッグランや犬の幼稚園、人間との触れ合いを犬たちに無理のない程度に実戦しています。
・簡単なトレーニング(認知エンリッチメント)

トレーナーではないので根本的な問題解決や専門的なことはできないですが、座って待つことやアイコンタクト、呼び戻しなどを個々の学習スピードや集中力に合わせて少しづつ行っています。何かができると成功報酬としておやつがもらえるのも簡単な脳への刺激になっていると思います。
・スニファリング:匂いを嗅ぐこと(感覚エンリッチメント)

時間に余裕がある際には運動に重点を置く散歩だけではなく、犬たちが満足いくまで匂いを嗅がせ、行きたい方向を犬たちに決めさせる散歩をするようにしています。
・知育玩具の使用(認知エンリッチメント)


ペーストおやつや野菜、果物、フリーズドライなどを知育玩具やリックマット(舐めるためのマット)に塗ったり詰めたりして与えています。
凍らせることでさらに時間がかかるようにしています。
他にはかくれんぼして私を見つけたらおやつを与えたり、タオルにおやつをまいて丸めて結んだものを与えたり、犬用パズルを使用したり、方法は様々ですが犬自身が”考える行為”を増やすようにしています。
・クレートの使用(空間エンリッチメント)

それぞれ1つずつクレートを使用し、夜間や来客時に使用しています。
今ではそれぞれが自分の落ち着く場所として使っていて、昼寝する時にも自発的に入っています。取られたくないおやつやおもちゃを持ち込んだり、隠したりもしています。
まとめ
エンリッチメントというと横文字だし、専門用語ぽいし、難易度高そうに感じますが実はそんなこともなく、日常生活で簡単に実践できることはたくさんあります。
犬の生態や個性を気にしながら犬の生活をより豊かにすることが犬にとってのエンリッチメントと言えるでしょう。
皆さんもぜひ実践してみてくださいネ。

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